・・・「身体にムチを打ってダンスを続けていたので、私の身体は引退するという判断を喜んでいたように思います。私と同じ時代に舞台に立った仲間たちの中で、今引退しようとしている人たちもいますが、背中や足首を痛めてきたことで、彼らの身体はもうボロボロです」・・・
・・・「バレエダンサーから振付師に転身することは、恐ろしかったです」とウィールドンは続ける。「大きなキャリアの転機を迎えて、多くの人が感じるように恐ろしかった。・・・
こう語るのはイギリスのロイヤルバレエ団のアリスの不思議な国の振付師で元ニューヨークシティバレエのバレエダンサーのウィードン氏。
彼の経歴をみると、すでに28歳の時にダンサーとしての職業をサッパリ捨て、コレグラファーとしてゼロから再出発している。
日本と違ってバレエがすでにエンテーテイメントで職業の1つとして社会保障も整備されているアメリカの最大といわれるバレエ団のダンサー。だから振付師となるにも準備段階の時期にダンサー同士の横のつながりや、バレエダンス関係者のつながり等がすでにできていた上での振付師ということはいうまでもない。
ダンサーの生活の保障がある程度整っているアメリカでさえ、28歳の若さだからあっさりダンサーとしてのキャリアを捨て、振付師としてゼロから出発する向こう見ずな大胆な行動ができたのだろう。
日本だとまずダンサーの後に振付師になりたいと思って誰でもできることではない。
コンテンポラリーダンスの振付師となるにはバックベースに、コンテンポラリーダンスができることがまず前提となる。
しかも日本でコンテンポラリーダンサーと言われる人たちの数はクラシックバレエよりも多いが、一部の帰国組のダンサーや海外レベルのワークショップを定期定期にうけてダンスと自分自身を研究しているダンサーを除いて、レベルも世界的規模からみるとかなり低い。
セッションハウスでも時々自作自演の振付や小グループによる発表をみにいくが、本当に海外の舞台で発表するまでのレベルにいたってないダンサーが多く見受けられる。
下手をすると小学生の学芸会のお遊戯程度である。
(セッションハウスで自称ダンサーとして作品を自作自演している友人がいますが、ここでの小さな公演は参加費を払って参加する発表ですよ。バレエでいうとアマチュアの発表会と同じ。
)
逆に日本バレエ協会や新国立劇場で公演させるレベルの高いコンテンポラリー作品をみにいくと、ダンサーたちはもちろんのこと、コレオグラファー自身も海外の有名なバレエ団でコンテンポラリーダンスと触れ、一線で踊ってきたバレエダンサーたちが振付師となっているこる作品が多い。
こうなると振付のベースとなるダンスの知識、他の文化的背景が日本にいるだけで自己満足している自称ダンサーも含む人たちとはレベルの差は歴然としてることに気づかされる。
そういった世界のバレエ団でコンテンポラリー作品に触れ、自らも振付するチャンスやインプロの経験も十分にあり実力を認められて活躍してきたダンサーが振付指導している人たちがこれからもっと少しずつ増えることが予想される。
そういった意味で、バレエダンサー引退後に振付師となり徐々に小さな団体やグループに振付したり、自作自演でダンサーと振付師としての活動を続けていく人たちは、生涯も踊りの世界で収入も確保していける。
ただし、日本では指を数える程度の振付師しか存在しないし、望んでもなれないダンサーがほとんどである。どの程度までバレエダンサーとして生きていくのか、どの程度バレエやそれ以外の踊りが好きなのか?その程度を考えるのは20代前半には考えていたほうがベター。
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